はじめに
毎日、患者様の治療に携わる中で、よくいただく質問がある。
それがタイトルにもある「プロテインを飲むと、腎臓が壊れませんか?というもの。
この問題、その人の視点や目的、考え方によって答えは変わってくると思いますが、臨床実験の結果をもとに僕なりの意見を解説していこうと思う。
健康な腎臓を持つ人には問題ない
複数の研究で、健康な腎臓を持つ人が高タンパク質食(プロテインを含む)を摂取しても腎臓に悪影響を及ぼさないことが確認されています
また、高タンパク質摂取が腎機能に与える影響を検討したところ、正常な腎機能を持つという点において悪影響は認められなかった。
つまり、元々「腎臓」が悪くない限り、高タンパク質食(プロテインを含む)を摂取しても、問題ないということがわかっています。
腎臓に疾患がある場合は注意が必要
一方で、慢性腎疾患(CKD)を持つ人は、腎臓に負担をかける可能性があるため、タンパク質摂取量をする制限が必要です。
腎臓が本来の働きを十分に果たせない状態では、タンパク質代謝による老廃物などが体内に集中しやすいためです。

腎臓に負担がかかり、体に悪影響を与えるのではないか?
と、考える方は、健康診断の結果や、腎機能の数値を見返してもらい、異常がないかをチェックすると良いですね。
体重に応じたタンパク質摂取量を守る
健康な成人が1日に必要なタンパク質量の目安は、体重1kgあたり約0.8~1.2g(日本人の場合)です。
筋肉の維持や増量を目的にする場合は、体重1kgあたり1.6~2.2g程度の摂取も問題はないとされています。
つまり、健康な腎臓を持っていて、タンパク質摂取量を体重1kgあたり1.6~2.2g程度に抑えていれば、健康被害はないということになります。
私を例にすると…
体重63kg × 2.2g = 138.6g(タンパク質摂取量の目安)
プロテインを含めても、140g近い数字は摂取可能となる。
(この数値は、鶏むね肉に換算すると1.4kgに相当する。果たして一般人が、腎臓が壊れるほどタンパク質を接種できるのだろうか…?と考えてしまう量ですね)
水分補給の重要性
タンパク質の代謝による老廃物(尿素窒素など)は腎臓から排泄されるため、適切な水分補給を行うことで腎臓への負担を軽減できます。
特に運動後は、汗で大切な水分を補うことも忘れないようにすることで、リスクを下げていきましょう。
証拠からの結論
プロテイン摂取は、健康な腎臓を持つ人にとっては安全であり、腎臓病などの過去の既往がある場合を考えて、適切な量を守れば腎臓を壊すリスクはありません。
健康の維持や代謝向上、免疫機能の向上が期待できることを考えると、プロテイン摂取を含めた「高タンパク質食」は、健康維持に重要であると言えます。
先ほども書かせていただきましたが、ご自身で判断するのがご不安な方、腎臓に不安のある方は、健康診断の結果を確認したり、医師への相談を検討してみると良いでしょう。
参考文献
- Morton, RW, Murphy, KT, McKellar, SR, et al. (2018)。「健康な成人における筋力トレーニングによる筋肉量と筋力の増加に対するタンパク質補給の効果に関する系統的レビュー、メタ分析、メタ回帰。」
- British Journal of Sports Medicine。Martin, WF, Armstrong, LE, & Rodriguez, NR (2005)。「食事性タンパク質摂取と腎機能」栄養と代謝。